後宮からの逃走 : Die Entführung aus dem Serail

『後宮からの逃走』(こうきゅうからのとうそう、ドイツ語:Die Entführung aus dem Serail)K.384は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1782年に作曲した三幕からなるドイツ語オペラである。『後宮からの誘拐』とも呼ばれる。


モーツァルトの5大オペラのひとつとして高い人気を誇る。中ではもっとも若い時期の作であり、溌剌としたリズムと親しみやすいメロディにあふれ、標準的な台詞をふくめた上演時間もやや短めである。

後宮からの逃走の登場人物

太守セリム(セリフのみの役)
ベルモンテ、スペインの貴族(テノール)
ベドリッロ、ベルモンテの召使(テノール)
コンスタンツェ、ベルモンテの婚約者(ソプラノ)
ブロンデ、コンスタンツェのイギリス人の召使(ソプラノ)
オスミン、太守の監督官(バス)
イェニチェリ、民衆の合唱

後宮からの逃走のあらすじ

場所:地中海の沿岸のどこかにある太守(ドイツ語で「Bassa」)の王宮
時代:18世紀
主人公ベルモンテが召使ペドリッロの助けを借りながら、恋人のコンスタンツェをトルコ人の太守セリムの後宮(ハレム)から救い出すというもの。

後宮からの逃走の第1幕

ベルモンテは婚約者コンスタンツェを探している。コンスタンツェはイギリス人の女中ブロンデとともに海賊の手に落ち、太守セリムに売られたのだった(アリア「ここで会えるはずだ」)。
太守の家来オスミンが庭にイチジクを摘みにやってくるが、ベルモンテのあいさつを無視する(アリア「かわい子ちゃんを見つけたら」)。ベルモンテは召使ペドリッロの情報を聞き出そうとする(二重唱「おまえの歌はもうたくさんだ」)。オスミンは怒り出す(アリア「こういう風来坊の連中ときたら」)。ベルモンテはペドリッロと再会し、コンスタンツェを誘拐することにする(アリア「コンスタンツェよ!君に再会するのだ」)。

イェニチェリの合唱(「偉大な太守を歌で迎えよう」)に伴われて、太守セリムがコンスタンツェと登場する。コンスタンツェはセリムの求愛を拒む(アリア「ああ私は恋し、本当に幸せでした」)。ペドリッロの勧めによって、太守セリムはベルモンテをイタリアの建築家として雇う。しかし、太守の家来オスミンはベルモンテを王宮に入れようとしない(三重唱「とっとと失せろ!」)。

後宮からの逃走の第2幕

召使いのブロンデはオスミンの荒っぽい求愛を拒絶する(アリア「優しくして喜ばせて」、二重唱「行くよ、でもペドリッロはやめておけ」)。コンスタンツェは悲嘆に暮れながら、召使いのブロンデを迎える(アリア「悲しみが私の宿命となった」)。太守セリムは暴力を使うと脅すが、コンスタンツェは苦痛も死も恐れないと答える(アリア「どんな拷問が待っていようと」)。

ペドリッロは恋人のブロンデに会い、ベルモンテが来て逃亡の用意をしていることを伝える。ブロンデは大喜びする(アリア「幸せと喜びが」)。ペドリッロはオスミンを誘って酒を飲ませ、眠らせようとする(アリア「さあ戦いだ」、二重唱「バッカス万歳!」)。この作戦は成功し、ベルモンテはコンスタンツェと再会する(四重唱「喜びの涙が流れるとき」)。ベルモンテとペドリッロは、コンスタンツェとブロンデの貞節を疑うが、誤解が解けて和解する(四重唱「ああベルモンテ、私の命」)。

後宮からの逃走の第3幕

ベルモンテとペドリッロがはしごを持って庭にやってくる(ベルモンテのアリア「お前の力が頼りだ」、ペドリッロのロマンツェ「黒人の国に囚われ」)。ベルモンテはコンスタンツェを連れ出すことに成功するが、ペドリッロがブロンデと逃げ出そうとした時にオスミンに捕まる(アリア「ああ勝利だ」)。ベルモンテとコンスタンツェも衛兵に連行される。太守セリムはベルモンテが仇敵の息子であると知り、死刑を命令しようとする(二重唱「何という運命だろう」)。しかし、太守セリムは二人の悲嘆を聞いて改心し、全員を釈放する。残忍な処刑を楽しみにしていたオスミンはろうばいする(フィナーレ「ご恩は決して忘れません」)。

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