『マクベス』(Macbeth)は、ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した全4幕からなるオペラである。ウィリアム・シェイクスピアの同名戯曲『マクベス』に基づいており、1847年にフィレンツェで初演された。1865年に大幅な改訂がなされ、今日ではこの改訂版の方がより頻繁に上演される。
マクベスの登場人物
マクベス(バリトン):スコットランド王ダンカンに仕える将軍で、王を弑逆してその座につく。台本中では原作戯曲通りにMacbethと表記されているが、イタリア語にthの音([θ]:無声歯摩擦音)が存在しないことから、他者が呼びかける際にはMacbetto(マクベット)と呼ばれる。
バンコー(バス):やはりダンカン王に仕える将軍。原作ではBanquoだが、本作ではBancoと表記される。
マクベス夫人(ソプラノ):オペラ台本中でも原作通りLady Macbethと表記される。他の登場人物から名前を呼ばれることはない。
その侍女(メゾソプラノ)
マクダフ(テノール):スコットランド・フィフの領主
マルコム(テノール):ダンカン王の遺児
医師(バス)
ダンカン王(黙役):本作ではDuncano(ドゥンカーノ)とイタリア風に呼ばれる。
合唱
マクベスのあらすじ
マクベスの前奏曲
3分ほどの短いもの。魔女のテーマ、およびマクベス夫人夢遊のシーンのテーマが再構成されている。
マクベスの第1幕
マクベスの第1幕第1場 森の中
マクベスとバンコーは戦場から勝利しての帰途、魔女が乱舞しているのに出逢う。魔女らは「マクベスはコーダーの領主となり、やがては王となる。バンコーは王の祖先となろう」と予言し姿を消す。そこへダンカン王の使者が到着、マクベスがコーダー領主に任命されたことを伝える。2人は予言の一部が早速成就したことを知り驚きつつ帰途を急ぐ。魔女たちは再び現れ、マクベスは自分の運命を知るためまた訪ねてくるだろう、と歌う。
マクベスの第1幕第2場 マクベスの居城の広間
夜。居城ではマクベス夫人が夫の帰りを待ちわびている。マクベスが寄越した「魔女と逢い予言を受け、その通りにまずは領主になった。このことは内密に」との手紙を、夫人は独り読み上げ、夫が勇気を出してこの予言を実現させていって欲しいと願う。そこに召使が現れ、マクベスだけでなく、ダンカン王も急用でこの城を今晩訪問することになった、と伝える。夫人が好機到来と狂喜しているところへマクベスが帰還する。ダンカン王は賓客用の寝室へ入る。夫人は躊躇するマクベスをせきたて、王を刺殺させる。自らの所業に呆然として寝室から戻ってくるマクベスの手から、夫人は血にまみれた剣をとりあげ、眠り込んでしまった王の従者の側に置き、夫婦は退場する。
朝、マクダフとバンコーが王を起こしにやってくる。マクダフはダンカン王が暗殺されているのを発見、城内の一同を呼ぶ。一同は驚愕し、暗殺犯人に神の罰の下らんことを祈る。マクベスと夫人も何食わぬ顔で皆に調子を合わせる。
マクベスの第2幕
マクベスの第2幕第1場 マクベスの居城
計画通りマクベスはスコットランドの王となったが、彼ら夫婦には魔女の予言「バンコーは王の祖先となる」が気になってならない。そこで刺客を放ち、バンコーとその息子を殺すことにする。
マクベスの第2幕第2場 居城近くの林
バンコーが息子と2人で城外の林を歩いているところへ刺客の一団が襲い掛かる。バンコーは息子を逃がすことに成功するが、自らは凶刃に倒れる。
マクベスの第2幕第3場 居城の大広間
城の大広間ではマクベス新王を寿ぐ晩餐会が行われる。マクベス夫人は乾杯を歌う。刺客が戻ってきて、マクベスに一部始終を報告する。マクベスは晩餐の席に着こうとするが、バンコーの亡霊を発見してうろたえる。他の列席者には何も見えない。晩餐会は中止され、人々はマクベスの行動に不審の念をもつ。
マクベスの第3幕 魔女たちの棲む洞穴
魔女たちの棲む洞穴にマクベスが現れ、自分の運勢を教えて欲しいと願う。新たな予言は「マクダフには警戒せよ」「女の産道を通ったものにはマクベスは倒せない」「バーナムの森が動かない限り怖れることはない」であった。マクベス夫人も現れて、夫妻は怖れることなく権力を死守しようと誓う。
マクベスの第4幕
マクベスの第4幕第1場 荒野
スコットランドとイングランドの国境近くの荒野。スコットランドから逃れてきた人々はマクベス新王の圧政を訴える。マクダフは、自分の妻と子供らがマクベスに殺された悲しみを歌う。ダンカン王の遺児マルコムが現れる。彼はイングランド軍の助勢を受け、マクベス王への反乱を計画している。彼は軍勢に、バーナムの森の木を伐り、その枝葉を用いて擬装を行うように命令する。
マクベスの第4幕第2場 マクベスの居城、大広間
マクベス夫人は精神を病み、毎夜城内を徘徊している。彼女は夢幻状態で、ダンカンやバンコーを殺したこと、手に付着した血がどうやっても拭い去れないことを訴える。隠れてこれを聞いていた医師と夫人の侍女は恐れおののく。
マクベスの第4幕第3場 マクベスの居室
マクベスは、マルコムとその一派が反乱を起こしたとの情報に激怒する。彼は自軍の優勢を信じて反撃を命じるが、まずマクベス夫人が狂死したとの報、続いてバーナムの森が動き出したとの報に接して、周章狼狽の態で戦場に赴く。
マクベスの第4幕第4場 野戦場
マクベスとマルコムの軍勢が戦闘を繰り広げ、やがてマクベスとマクダフの一騎打ちとなる。マクベスは、自分は女の産道を通った者には殺されない、と言うが、マクダフは意に介さない。彼は母親の胎内から切開で取り上げられた子供だったのだ。マクベスは愕然としてマクダフの刃に敗れ死に、マルコム軍が勝利を収める。マルコム、マクダフ、兵士たち、それに人々は圧政の終焉と勝利を祝う。
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