La forza del destino : 運命の力

『運命の力』(うんめいのちから、La Forza del Destino )は、ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した全4幕からなるオペラである。
今日演奏されるのは殆どが改訂版による。また改訂版で挿入された序曲もそれ自体有名で、単独での演奏機会も多い。

運命の力の登場人物

カラトラーヴァ侯爵(バリトン)
ドンナ・レオノーラ(ソプラノ):侯爵の娘。
ドン・カルロ・ディ・ヴァルガス(バリトン):侯爵の息子、レオノーラの兄。
ドン・アルヴァーロ(テノール):騎士。レオノーラとは相思相愛の仲。スペイン人のペルー総督とインカ帝国末裔の王女との間に生まれたという複雑な出自をもつ。
プレツィオジッラ(メゾソプラノ):ジプシーの若く美しい娘。
グァルディアーノ神父(バス):修道院長。なお「グァルディアーノ」は人名でなく、Padre Guardianoで修道院長の意。
フラ・メリトーネ(バリトン):下働きの修道士。

運命の力のあらすじ

時と場所:18世紀半ば。スペイン・セビーリャおよびオーストリア継承戦争の戦場となっているイタリア

運命の力の序曲

運命の力の第1幕 : カラトラーヴァ侯爵の居城

娘レオノーラとドン・アルヴァーロは相思相愛の仲であるが、アルヴァーロがインディオの血を引いていることを理由に父カラトラーヴァ侯爵は結婚に反対しており、娘レオノーラは家族愛と恋愛の板ばさみの悲嘆に暮れている。
居城に忍び込んだアルヴァーロは、娘レオノーラに駆落ちを提案、レオノーラが決心を固めたその刹那、侯爵が2人を発見する。アルヴァーロは抵抗の意思のないことを示すため所持していた短銃を捨てるが、それは暴発し侯爵に致命傷を与える。侯爵は娘レオノーラを呪いつつ死ぬ。レオノーラとアルヴァーロは、自分達の過酷な運命を嘆く。

運命の力の第2幕

第1幕から18か月後。

運命の力の第2幕第1場 : ホルナクエロス村の宿屋

村の宿屋で人々が食事をとっている。カラトラーヴァ侯爵の息子ドン・カルロは、学生に変装し仇敵アルヴァーロを追ってこの村までやってきた。ジプシー女プレツィオジッラは男たちに「イタリアでの戦争に参加して軍功を立てろ」と説いて回っている。カルロは「自分はドン・カルロの友人で、一緒に侯爵殺しのアルヴァーロを探していた。カルロ君は新大陸までアルヴァーロを追って行った」と自分の身の上話(もちろん作り話だが)を一同に聞かせる。実はレオノーラも男性に変装して当地に宿泊していたのだが、カルロの姿を認め、その話を聞くと慌てて逃亡する。

運命の力の第2幕第2場 : 同村の山中にあるデッリ・アンジェリ修道院

深夜、修道院の中庭。男装したままのレオノーラがやってくる。カルロの話から、アルヴァーロは自分を捨ててアメリカへ帰ったと思い込んだ彼女は絶望の余りこの修道院を訪ねてきたのだった。レオノーラはドアを叩き、出てきたメリトーネ修道士にグァルディアーノ神父に会わせてくれるよう依頼する。レオノーラはグァルディアーノ神父に自分の素性を明かし、この修道院の山裾の洞穴で、世を捨てた男性修道士として余生を過ごさせて欲しい、と懇願する。神父はその願いを聞き、修道士たちを招集、以後、この悩める者の住む洞穴に近寄る者は天罰が下るであろう、と厳かに宣言、レオノーラは一同と共に神に祈りを捧げる。

運命の力の第3幕

第2幕から数年後。

運命の力の第3幕第1場 : イタリア、ローマ近郊ヴェレートリの野戦場

イタリア戦線の野戦場。アルヴァーロはレオノーラが亡くなったと思い込んでいる。彼はスペイン人と高貴なインカ人の末裔という自分の出自を悲しみ、かつてセビリアでレオノーラと過ごした楽しい日々を追憶する。そこへドン・カルロが軍陣での賭博遊びのトラブルから追われて登場、アルヴァーロは、カルロの命を救ってやる。2人は互いに偽名での自己紹介をし、戦場で知り合ったのも何かの縁、今後は生死を共にしよう、と義兄弟の契りを結ぶ。戦闘が再開され、2人は前線へと急ぐ。
アルヴァーロ率いるスペイン軍は首尾よくドイツ軍を撃破したが、アルヴァーロは負傷し担架で運ばれてくる。カルロは戦友を案じ傍にいる。カルロはアルヴァーロを勇気付けようと「この軍功で貴方はカラトラーヴァ勲章を受章できるだろう」と言うが、アルヴァーロが「カラトラーヴァ」という名に過剰に反応するのを訝しく思う。死期が近いと考えたアルヴァーロは小箱と鍵をカルロに示し、「この箱には決して明かしてはならない秘密が入っている。自分が死んだら箱を開けずにそのまま燃やしてほしい」と遺言し、野戦病院へ連れて行かれる。カルロは、「カラトラーヴァ」に対する過剰反応、「絶対の秘密」という小箱などからアルヴァーロの正体をいよいよ怪しむが、義兄弟の誓いを立てた以上約束は守らねばならない、と苦しい心情を歌う。やがてカルロは、アルヴァーロがもう一つの荷物を残したことに気付き、「こちらを開けてはならないとは約束していなかった」と包みを解くと、中から妹レオノーラの肖像画が現れる。彼こそは仇敵アルヴァーロと驚くカルロ。ちょうどそこへ軍医が現れ「君の戦友は一命を取り留めた」と告げる。カルロは、これで自分が仇を討つことができる、と狂喜する。

運命の力の第3幕第2場 : 宿営地

夜の宿営地。戦傷が癒えたアルヴァーロが物思いに耽るところへカルロが現れ「もう傷は癒え、闘うことができるか」と訊ね、「我こそは高貴な家名を汚された汚辱をそそぐべく、お前を追ってきたドン・カルロ・ディ・ヴァルガス」と名乗る。アルヴァーロは自分の秘密が知られてしまったことに驚き悲しむが、いったんは義兄弟の契りを結んだ人と戦うことはできない、ましてレオノーラが死んだ今となっては、と決闘を拒絶する。カルロは、レオノーラは行方不明ではあるが生きているらしいこと、しかしアルヴァーロを討った後、自分は彼女も探し出して殺すこと、を告げる。アルヴァーロも遂には剣を抜き2人は決闘するが、巡邏兵に発見され引き離される。アルヴァーロは「もはや修道院にしかこの世での居場所はない」と剣を捨て、その場を立ち去る。
朝となり、スペイン軍に従ってやってきたプレツィオジッラ、メリトーネ修道士、スペイン兵、イタリア兵による賑やかな情景が展開される。プレツィオジッラは景気付けに軍歌を歌い、一同唱和する。

運命の力の第4幕

運命の力の第4幕第1場 : 修道院の中庭

修道院の中庭。アルヴァーロも今やこの修道院に、ラファエッロ神父と名乗って暮らしている。グァルディアーノ神父とメリトーネ修道士が貧民に食べ物の施しを与えているところへカルロが登場、ラファエッロ神父に面会したいと告げる。ラファエッロ神父が現れると、カルロは「とうとう見つけた、決闘をしろ」と剣を手渡す。アルヴァーロは「今では神に仕える身ゆえ決闘はできない、君の許しを得たいと思っている」と断るが、カルロがアルヴァーロを臆病者と罵り、アルヴァーロの血を穢れているとさげずみ、更にはアルヴァーロの頬を平手打ちするに及び、遂にアルヴァーロも決闘を承諾、2人は決闘の場所を求めて山裾の方へ駆けていく。

運命の力の第4幕第2場 : 洞穴の前

2人が決闘の場所として選んだのは、あろうことかレオノーラが身を隠す洞穴のすぐ近くだった。カルロは舞台裏で致命傷を負い、最後の祈りのために司祭を求めている(アルヴァーロは禁を犯して決闘した身ゆえ、カルロの臨終をみとることはできない)。アルヴァーロは洞穴の中に隠者がいるらしいことに気付き、死にゆく者を看取ってほしいと依頼する。初め拒絶していたレオノーラが遂に表に出ると、そこにはアルヴァーロ。アルヴァーロは「自分は禁を犯し、あろうことか君の家族を再び殺めてしまった」と告げる。レオノーラは兄カルロを探しに舞台裏へ走るが、そこで断末魔のカルロに刺されて致命傷を負ってしまう。グァルディアーノ神父がレオノーラを抱きかかえて舞台に登場、アルヴァーロは酷い運命を呪おうとするが、グァルディアーノはそれを静かに制止、レオノーラはアルヴァーロに「先に神の御許へ向かいます」と述べ息絶え、グァルディアーノは厳かに「彼女は神に召された」と宣言して、幕。

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